第7話 至福
それから十日後、伝右衛門と絹は結婚式で甲府へ出かけていった。ひかるが猛に、横浜へ行きたいといいだす。どうしても猛の話てくれた海が見たいと。猛はひかるを連れてこっそり家をぬけだし、列車にとび乗った。もちろんお金などあるはずもなく、無賃乗車だった。が、無賃乗車が見つかり二人はひとまず琴子にひきとられた。一方、ひかるたちが夜になっても帰らず、三枝家では大騒ぎ。村人総出で山狩りをしたり、川ざらいをしたり・・・。文彦は猛のことを激しくののしる。翌日、ひかるは生まれて初めて見る海に深く感動した。この日のことを一生忘れまいと幼な心に思うのだった。ひかると猛を送って、伝右衛門の妾琴子が三枝家へ。