第1話
昭和二十六年一月、国会議員・唐沢徳光の娘、瑠璃子は幸せの絶頂にいた。兄・光一の友人・直也と婚約中で、結婚式を四月に予定していた。直也は父・直輔の経営する造船所の資材部長だ。 ある日、直也は父の代理で、実業家・荘田勝平のパーティに瑠璃子とともに出席する。吉原で女郎屋を経営し、朝鮮特需で成り上がってきた勝平を、直也は軽蔑していた。 その勝平が瑠璃子を子どもの頃から知っているという。瑠璃子は思い出せないが、光一に聞くと、唐沢家の別荘番をしていた男らしい。 徳光が造船界と政界との癒着を暴く。直輔は直也の結婚に反対を唱える。