第42回  日本美 もっと深く 『足立美術館』(島根・安来)

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●日本美 もっと深く 「足立美術館」(島根・安来)
日本の美術館の魅力を纏めた一冊の本『フランス人がときめいた日本の美術館』。著者でフランス人の美術史家ソフィー・リチャードさんのメッセージをヒントに、女優で脚本家、詩人の近衛はなが日本の美術館の魅力を再発見するトキメキの旅へ。今回の舞台は、島根県の東側、安来節で有名な安来市にある「足立美術館」です。

●日本庭園の美に触れ、横山大観の作品に接する美術館を
足立美術館は、創設者・足立全康が、自身が生まれ育ったこの地に「日本庭園の美に触れ、横山大観の作品に接する美術館を」という思いのもと1970年に開館。その敷地はなんと5万坪を誇ります。杉苔を主体とした京風の雅な庭園、手入れの行き届いた枯山水庭、横山大観の名作を表現した「白砂青松庭」など、その美しさは世界にも認められアメリカの日本庭園専門誌が全国900箇所以上を対象に実施した「日本庭園ランキング」で16年連続1位に。さらに、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」では最高評価の三つ星として掲載されました。

●館内の窓がそのまま「生の額絵」に
ソフィーさんが「来場者は庭園の景色から屏風や絵巻などに描かれた絵画を連想するだろう」と記したように、順路を進むごとに現れる館内の窓から見る風景は、まさに「生の額絵」。創設者の足立全康は「庭園も一幅の絵画である」という言葉を残しています。

●「水墨の富士の従来作の集大成」と称された横山大観の傑作
大観の数多の墨画の中でも5本の指に入ると言われる傑作と言われる「雨霽る」を紹介。湧き上がるような雲の向こうにある富士が山々の情景を見守るように存在感を示していて、墨一色で表すその濃淡が絶妙に描かれていました。

●大観画業50年を機に描いた「山海二十題」
大観画業50年を機に山に因む作品10作、海に因む作品10作を描いた「山海二十題」。1年の月日を費やして力を注いだ静かなシリーズの影には、太平洋戦争を背景に生まれた作品ならではの興味深いエピソードがありました。

●北大路魯山人の人生とその人間性を物語る展示
若くして書や篆刻の才能を認められ、その後、料理を取り巻く総合的な美を求め独自の美的世界を築きあげた北大路魯山人。足立美術館では、約400点の魯山人作品を所蔵していて、その展示からは彼の人生と人間性を垣間見ることができました。

紹介作品:「枯山水庭」「白砂青松庭」、横山大観「雨霽る」「海潮四題 夏」「海潮四題 秋」「南溟の夜」、上村松園「娘深雪」ほか

取材協力:足立美術館