ACT9  ノーと言える会社員

sho2nd_09.jpg  黒雲たれこめ、豪雨降り注ぎ、雷鳴轟く何とも不吉な日であった。千夏(江角マキコ)をはじめとするショムニのメンバーは、その雰囲気と呼応し、仕事の失敗ばかり。秘書課の美園(戸田菜穂)の攻撃にも言い返すことすらできず、ロビーで開く「社内暑気払い」の準備があるというのに、まさに「ついていない」を絵に描いたような日であった。

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 だが、どういう訳か、ショムニの天敵・人事部の寺崎部長(高橋克実)は、常務昇進の話は持ち上がるわ、重要案件である「アメリカン・カンパニー」との提携交渉のための社長代理は命じられるわ、その交渉相手のワダミエ副社長がお好みというストライプ柄のスーツが業者から贈られるわ、食堂のかけそばから海老天が現れるわ、さらには、心を残したまま別れた妻から復縁話を持ち掛けられるわ、と、こちらは、正反対の「つきまくり」状態だった。

 リエ(高橋由美子)は、これを「運勢反比例の法則」と説明する。ショムニと人事部は正反対の運勢を歩むのだと言う。丁度その頃、あずさ(戸田恵子)は暑気払いの景品の「松坂牛」を持ったまま、社長金庫室の通路に閉じ込められていた。千夏は、あずさをそのまま、そこに残し「人事部の様子を探るよう」命じた。

 提携交渉のため、寺崎は「女帝」と怖れられるワダミエ副社長のご機嫌を損ねまいと、「禁煙」「厚化粧禁止」「動物愛護」など、ワダミエ好みの方針を次々に打ち出していた。もちろん「暑気払い中止」も...。千夏たちは、どうにかして人事部の横暴を阻止しようと、知恵を絞るのだったが、なかなか「ツキ」は巡って来ない。

 そうこうするうち、ワダミエ副社長が登場し、交渉がスタートした。だが、女帝はたばこを吸いはじめ、「大事なのは仕事だけだ」と、寺崎のお追従作戦を無視し、「要員削減」「社名変更」などの条件を次々に打ち出す。その倣岸不遜な物言いと態度にも「ツキ」を信じて、もみ手すり手で対応する人事部。だが、こと「日本的経営からの脱却」「終身雇用制の廃止」「社内行事廃止」など満帆商事の伝統の根幹にまで要求が及ぶと、寺崎部長も恐れをなし始めた。しかし、「社長代理でしょう。あなたが決めなさい」と、ワダミエ副社長は攻めの手を緩めない。が、寺崎部長は「ここをしのげば、常務」と、すべての条件を飲む方向で話を進めた。

 その様子とアメリカン・カンパニーが不安のある会社であることを、あずさの報告で知った千夏は、「社内暑気払いをただちに中止せよ」と言う寺崎部長に向かい、「常務らしい本当の仕事をしな」と啖呵を切る。だが、寺崎も引っ込まない。

 ところが、そこで寺崎の目に入ったのは、別れた妻・和恵の姿だった。和恵は楽しそうに屋台の焼きソバ作りにいそしんでいる。「あなたは見違えるように強くなった。私みんなに言ったの。寺崎は嫌なことは嫌と言う男だって」と嬉しそうに話す和恵。復縁を信じる寺崎は胸に迫るものを感じるが...。