ミラーを拭く男

ミラーを拭く男 © 2003「ミラーを拭く男」パートナーズ

皆川家は崩壊寸前だった。原因は定年間近の父・勤が起こした交通事故。飛び出してきた自転車を咄嗟によけたものの、その先にいた少女をはねてしまったのだ。かすり傷程度で助かったのだが、少女の祖父は執拗に金銭を要求してくる。勤は妻・紀子に対応を任せきりにし、紀子はなんとか夫と家族を支えようとしながらも疲れが隠せない。
働く意欲を失った勤。汚れたカーブミラー越しに見た事故の記憶が脳裏をよぎる。驚愕の表情、方向を見失った車、カーブミラーのポールに激突、衝撃、少女の泣き声...。
軽いうつ症状と診断されたその日、勤は脚立と清掃用具を携えて事故現場のミラーを一心不乱に磨き始める。そんななか、裏のパネル部分に"贈・くましろはずき"の刻印を発見。それは数年前、その場所で事故死した幼い子供の名前だった。
遺族のもとを尋ねた勤はカーブミラーの設置の経緯を聞かされる。死亡事故が起きてしまったにもかかわらず動こうともしない役所の対応に業をにやした彼らが、事故の賠償金で強引に設置したものだった。
勤は会社もやめて、市内全域のカーブミラーを拭き始めた。市内のカーブミラーをすべて拭き終えた勤は、突然家族の前から姿を消した。
北海道に着いた勤の目標は、全国のカーブミラーをすべて拭くことに。旅を続ける中で勤は、初老のサイクリストと出会って励まされたり、カーブミラーの設置を求める田舎町に歓待されたりする。しかし勤は、自分の行為が自らの意思とは離れたところで大仰な扱われ方になっていることに疲れを感じ始めていた。
そんなある日、勤はミラーの清掃中に事故にあってしまい病院に搬送される。連絡を受けて駆けつけた家族と、勤は三年ぶりに再会することになるが...。

【スタッフ】
監督・脚本:梶田征則

【キャスト】
緒形拳
栗原小巻
辺土名一茶(DA PUMP)
国仲涼子
水野久美
岸部一徳
大滝秀治
長門裕之
津川雅彦 他

(2003年、日本)