第40回  盛岡 宮沢賢治の世界と郷愁の居酒屋

盛岡 宮沢賢治の世界と郷愁の居酒屋 第40回

「盛岡」の名は"幾春も華の恵みの露やこれ 宝の珠の盛る岡山"の連歌に由来するといわれる。"盛り上がり栄える岡"か。さて、「盛岡城跡公園」から散策だ。かつては「不来方(こずかた)城」と呼ばれた城跡の積み上げられた石垣は美しく、東北三名城の品格を今に伝えている。
二の丸付近には、"不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心"と石川啄木の歌碑がある。その昔、この場所に寝ころんで文学に夢を見た啄木の姿が目に浮かぶ。「中津川」沿い。秋の気配を味わいながらのんびり散策。水底が見えるほどの澄みきった清流には鮭がのぼる姿があちこちに。散策は「もりおか啄木・賢治青春館」へ。この地で学生生活を送った、石川啄木と宮沢賢治の青春時代やその作品が紹介されている。
"雨ニモマケズ手帳"や賢治直筆の手紙。あぁ、賢治の果てしなく透明な世界に想いをはせる...。盛岡の夕暮れとともに居酒屋へ。「愛染横丁(あいぜんよこちょう)」だ。中津川の「中の橋」あたり。蔵を改装した居酒屋だ。
"川と銀行 木のみどり 町はしづかにたそがるる"。賢治の詩が良く似合う。日本酒に力を入れる主人が選ぶ月替わりの酒が好評で、"カツオのタタキ漁師風"は、すり下ろした玉ねぎをかけた珍しい逸品。秋の地もの"きのこ汁"もすばらしい。八幡町の古い町並みに郷愁の居酒屋が「とらや」だ。ここの定番はダシで軽く煮た豆腐にネギ、削り節、海苔を山盛りにした"豆腐"と、"青唐辛子の南蛮天"。思わぬうまさに笑みがこぼれる。地元の店の飾らない居心地に、くつろぎのひとときを想う。

<太田和彦さんが訪ねたお店>
六分儀
岩手県盛岡市中ノ橋通1丁目4-15
019-651-1987

直利庵(ちょくりあん)
岩手県盛岡市中ノ橋通1-12-13
019-624-0441

愛染横丁(あいぜんよこちょう)
岩手県盛岡市中ノ橋通1-3-21
019-651-9052

とらや
岩手県盛岡市南大通1-5-8
019-623-6745