第14回  浅草 人情味あふれる下町の味わい

浅草 人情味あふれる下町の味わい 第14回

"火事と喧嘩は江戸の花"の言葉に代表される粋な下町文化の中心地「浅草」。浅草寺の門前町として江戸時代以前から繁華街として栄えてきたこの町は、老舗の宝庫。こと、食文化の奥深さと豊かさは、江戸庶民の味から明治の洋食、日本料理の味までをことごとく網羅する。
明治35年創業の老舗天ぷら屋「天藤」は、醤油やみりんをベースにしたタレを代々継ぎ足して使っている。これが、天ぷらの風味を巧みに引き立てる。さすがにひと味違う。フタ乗せ状態ででてくる天丼は、揚げたて天ぷらの風味も楽しんで欲しいという、創業時からの想いが継承されている。天ぷらに歴史あり。散策でぶらぶらと。
六区ブロードウェイは、全長約300mの商店街。明治より演芸場や映画館が密集する歓楽街として発展してきた。文化の発祥の地として繁栄し、数多くの演者や芸人、文人を生んだ。通りの名はニューヨークにちなんだようだ。
夕暮れも近づいた、いざ、居酒屋。雷門横、観音通りにある居酒屋「志婦゛や(しぶや)」は浅草の切り札となる居酒屋だ。昭和33年に初代が居酒屋として始め、以来、50年以上にわたって下町の信頼を得ている。大豆をゆでた"みそ豆"は青海苔とかきまぜると酒の肴に変身する。生ガキをわさびで食べる"かきわさ"も意外性のある旨さだ。三代目が充実させた酒は真の実力派ばかり。下町の人情味あふれる居酒屋の夜...今夜の酒は夏季限定"ひと夏の恋"としよう...

<太田和彦さんが訪ねたお店>
天ぷら 天藤
東京都台東区浅草1丁目41-1

志婦゛や(しぶや)
東京都台東区浅草1-1-6

浅草サンボア
東京都台東区浅草1-16-8